高齢者向けの住まい・施設とサービスの費用(3)

高齢者向けの住宅における介護保険事業所の併設状況

以前、高齢者向けの住宅(有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 [以下、「サ高住」と表記])とサービスの組み合わせのパターンが多岐に渡ることや、サービスの費用が分かりにくいという記事を書いた。今回は、それをもう少し詳しく見てみる。

高齢者向けの住宅には、多くの場合、介護保険事業所が併設されている。少し古いが、2014年3月に報告された、『有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究』を見てみよう。

高齢者住宅の介護保険サービス併設状況

「介護付きホーム」とは、介護保険法上の「(介護予防)特定施設入居者生活介護」の指定を受けたものである。このホームは、「(介護予防)特定施設入居者生活介護」サービスにより、介護保険の適用を受けて、住まいと一体的に介護サービス(介護が必要な高齢者が住むために一般的に必要とされるサービス全般)が提供され、その費用はおおむね介護度に応じた1日あたりの単価に利用日数を乗じて計算される。このように、介護付きホームは、介護保険法上の「(介護予防)特定施設入居者生活介護」によって、介護を必要とする入居者向けのサービスが提供されるため、他の介護保険サービス(「訪問介護」や「通所介護」、「居宅介護支援」等)が併設されていても、併設サービスの提供対象者は、基本的にホームの入居者ではない。併設サービスは、介護付きホームの所在地周辺の住民等に向けたものであると考えられる。
一方、「住宅型有料老人ホーム」と「サ高住」では、生活支援サービスとして見守りやコール対応等はあるものの、「(介護予防)特定施設入居者生活介護」のように、介護が必要な方に対して建物と一体的に介護保険サービスを行う体制はない。このため、介護保険サービスの提供は別途利用者の選択によるものの、併設する介護保険事業所がホームの入居者を提供対象として介護等を提供している場合が多くある。このようなことから「介護付き」とそれ以外では、形態は別物と捉えるのがよいと思う。(「介護付き」かどうかは、実際のホームごとにご確認を)

高齢者向け住宅と併設介護保険事業所との関係のイメージ

 

今回、住宅とサービスの組み合わせとして取り上げたいのは、介護付き以外のものである。グラフを見ると、住宅型有料老人ホーム、サ高住ともに、8割以上が介護保険事業所を併設している。中でもその割合が大きいのは、訪問介護(住宅型有料:53.0%/サ高住:50.3%)、通所介護・通所リハ(同 53.1%/52.1%)、居宅介護支援(同 36.3%/40.8%)である。

通所介護・リハは、外出や参加の機会の提供、家族のレスパイトなどを目的とし、主に日中に事業所へ通い、レクリエーションやリハビリに取り組んだり、入浴などのケアを受けるサービスであり、居宅介護支援は、介護保険サービス等の組み合わせ、内容の検討や給付管理を行うプランナーだ。訪問介護は、利用者の自宅へ訪問し、入浴、排泄、その他必要なケアを行うサービスである。そして、これらのいずれもが、併設する住まいに入居する高齢者を対象に、サービスを提供することを前提に設置されていることが少なくない。

中でも、訪問介護は、利用者の生活の場でケア等のサービスを提供するものであり、住宅サービス(介護保険外)と類似するケア内容も多いことから、訪問介護サービス(介護保険)と住宅サービス(介護保険外)との組み合わせが、特に分かりにくい部分だと考えられる。たとえば、安全のための見守りは、必要に応じて訪問介護でも提供可能とされるし、住宅サービスにも含まれていることが多い。入浴や排泄のケアについても、訪問介護、住宅サービスのいずれでも提供できるようになっている場合が多くある。

 

高齢者向けの住宅と訪問介護サービス

住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅と指定訪問介護サービスの組み合わせの場合を少し詳しく見てみる。

訪問介護は、介護保険制度の規定に沿って行われるもので、本来、時間と目的がはっきりしており、在宅へ伺うのに、何か困ったことありますか?というわけにはいかない。原則として予め把握した利用者の心身の状況に基づいて作成されたプランに基づき、何時から何時まで、何をするために伺うということが明確であり、その時間は、対象利用者のみのために費やす。

一方、高齢者向けの住まいへ入居する方のニーズの一つに、緊急時に随時対応できる体制による安心感を得たいということがあると考えられ、多くの高齢者向けの住まいは、何らかのコール端末を居室及び共用部に設置している。しかし、訪問介護はあらかじめ定められたケアを定められた時間、対象利用者に対してのみ行うものであるため、訪問介護によるコールへの対応は認められていない。(定期巡回・随時対応型のサービスは除く)

よって、訪問介護でも住宅サービス(介護保険外)でも提供可能なサービスもあるが、コール対応は、住宅サービス(介護保険外)でないと対応できない。

 

サービス提供可否のイメージ

サービス内容 住宅サービス(介護保険外) 訪問介護(介護保険)
コール対応 ×
複数利用者の見守り ×(訪問介護は1対1)
食事介助 〇(計画に基づく)
入浴介助 〇(計画に基づく)
排せつ介助 〇(計画に基づく)
(費用負担) 自費 介護保険告示上の額の1割等

注)住宅サービスの対応状況は、事業者により異なる

 

このようなことから、コール対応等を行うには、介護保険の訪問介護サービスを行う人員とは別に、住宅サービス(介護保険外)提供のための人員を配置する必要が生じる。そして、この人員が行う住宅サービス(介護保険外)と訪問介護サービスの提供量の割合の違いで、入居する側の負担も実際には大きく異なっているという状況があるのだ。(行政も、公費を使う介護保険サービスの適切な利用・提供の観点から、この区分を明確にするよう指導しているほか、住宅に併設する介護保険事業者以外のサービスの利用が自由に選択できるようにすることや、併設事業所が高齢者向けの住宅に入居する方のみでなく、その周辺地域の高齢者へもサービスを提供するよう指導しているようだ)

 

住宅サービスの費用

高齢者向けの住宅で、緊急(コール)対応や介護等の住宅サービス(介護保険外)を提供する事業者は、前述のように、その人員の配置が必要になる。24時間コール等に対応するためには、1日8時間で、単純に24時間をカバーするとして、1日3回の勤務枠を埋める必要がある。1か月(30日として)だと90回の要勤務枠となり、1人当たりの月勤務日数が21日なら、4.3名、急な休みへの対応等も考えれば、少なくとも5名を住宅サービス提供のための人員が必要になる。仮に1人あたりの人件費を220千円とすると、月1,100千円の住宅サービス人件費がかかることになる。

必要な勤務枠の計算

 

 

 

 

90回(要勤務枠) ÷ 21日(職員月間勤務日数) = 4.3名 ≒ 5名(必要人員数)
5名(必要人員数) × 220千円(人件費/人) = 1,100千円/月(住宅サービス人件費)

上記は、24時間を通して1名をギリギリで配置してのイメージだが、配置人数を増やしたり、また看護師を配置したりすれば、もっと高額になる。高齢者向けの住宅で、例えば管理費等が高額なのは、この人件費の負担が含まれている場合が多い。(本来、全額自己負担とすべき費用であり、この負担を入居者に求めるているのは、考え方としては、むしろ妥当と考えられる)
この住宅サービス人件費は、介護保険外サービスであるので、基本的に利用者の自費を財源とするが、住宅の定員が30名とした場合、住宅サービス人件費1,100千円を入居者に負担いただくとすると、少なくとも1人あたり37千円程度は必要になるだろう。

だが、高齢者向けの住宅で生活する際に必要になる、「居室代」、「共益費」、「水道光熱費」、「食事代」に、この住宅サービスの負担が加わるかどうかは、その高齢者向け住宅での月々の費用に大きな影響を与え、当然入居者の住まいの選択にも影響する。そこで、事業者によっては、この負担を入居者に負わせず、1割等の負担である介護保険サービスの提供量を多くすることで賄おうとする場合が出るのである。

このように、サービスの組み合わせの中で、その負担をどの費用で賄うかによって、高齢者向けの住宅におけるサービスの費用に大きな差が出ている現状もあるため、費用が一層わかりにくくなっているのである。
サービス事業者、利用者(入居者)双方が、この辺りのことまで十分に吟味して、提供、利用の是非を考えられればより良いのではないか、少なくとも、より詳しい情報が入居検討者に届けられることが必要ではないか、高齢者向け住宅とサービス提供の内容をよく見てみると、そのように感じることが度々ある。ここで触れた内容が、入居検討者や事業者の参考に少しでもなれば幸いである。

 

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