住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 ~監視強化といわれる中での運営の検討(2)~

前の記事で、介護保険サービスに依存しない運営を行うための収支モデルをご紹介しました。そのためには、建物サービスの人件費を管理費や生活支援サービス費として適切に入居者からいただくことで、建物単独で運営できる収支を検討しました。

ここからは、管理費や生活支援サービス費を低く設定した場合の収支モデルを見てみます。


管理費/生活支援サービス費を低く設定した場合

下表は、建物サービスを提供する人員を3名、毎日配置した上で、管理費または生活支援サービス費を低く設定した場合の収支モデルです。

ここでは、管理費/生活支援サービス費を26千円と設定してみました。ほかの条件は前の記事で紹介したモデルと変えていませんが、収入に対する割合で設定している「その他事業費」は下がっています。

また、管理費/生活支援サービス費を下げたため、入居者からいただく月額利用料の合計は、180千円から136千円となっています。確かに、この方が入居者の募集やしやすいように思えますが。

月額136千円・3名配置・95%入居の収支モデル

このモデルでは、95%の入居で月の収入が3,876千円、費用が3,828千円、収支差が48千円、収支差率は1.2%となりました。入居者数が少し減れば、すぐに収支差額がマイナスになる可能性があります。

建物サービスの人件費が、入居定員1名あたり63千円かかるにも関わらず、この費用を賄う管理費/生活支援サービス費を26千円と設定したため、大きく収支が悪化しました。

こうなると、月額利用料の総額が安く、入居者の募集はしやすい可能性があるものの、介護保険サービス等、他のサービスを提供して収入をカバーする誘因が大きくなると思われます。


建物サービスを提供する人員を減らした場合

次に、建物サービスを提供する人員自体を減らし、それに合わせた管理費/生活支援サービス費を設定した場合のモデルを見てみます。

下表では、1日に配置する建物サービスの人員を3名から1名に減らしています。こうすると、入居定員1人あたりの建物サービス人員人件費は21千円に下がり、1割を上乗せして入居者からいただく管理費/生活支援サービス費を設定しても、24千円になります。これにより、入居者からいただく月額利用料の総額を当初の180千円から134千円にすることができました。

月額134千円・1名配置・95%入居の収支モデル

利用料が下がりましたが、人員数を減らしたため、収支差額は1,279千円、収支差率は33.5%となっています。このモデルでも、その他事業費の額を収入に対する割合で設定し、固定的費用を無視しているため、実際にはもう少し事業費が大きくなると思いますが、それでもこのような事業で、いかに人員に関わる費用の影響が大きいかがわかります。

この場合、収支差額が十分に得られ、一見、介護保険サービス等に依存しなくても運営できそうに見えます。

しかし、このモデルでは、建物サービスを担う人員そのものが不足するため、要介護者等が入居している場合、入居者に随時必要になる介護等を提供することが難しくなります。(制度上も入居者等の状況に応じて配置を求めています。)その結果、建物サービスの人員が行うサービスを補完するためにも、介護保険サービス等の提供が必要になる可能性があります。

しかし、訪問介護等の提供ルールでは、随時の介護等に対応することが困難な場合も多いため、今度は介護保険サービス等の人員を多く配置して、入居者に随時必要になる介護等の提供を補う必要がでてきます。そうすると、補うための人員を増やした分だけ多くかかる人件費をカバーするために、やはり介護保険サービスを多く提供しようという誘因が発生しやすくなると考えられます。

このように、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、建物側のサービスを提供する人員を適切に配置したうえで、その人件費を適切に利用料に賦課しないと、建物側で独立した運営は行いにくくなる可能性が高まるのです。

必要な費用を入居者から適切にいただく利用料等の設定になっているか?

ご存じの通り、2021年度の報酬改定に関する社保審-介護給付費分科会資料(R3.1.18)の「評価の適正化・重点化」の項目の中には、「サ高住等における適正なサービス提供の確保」に関する部分があり、ここに以下のような記述があります。

訪問系サービス(定期巡回を除く)等

~略~

居宅介護支援

○ 同一のサービス付き高齢者向け住宅等に居住する者のケアプランについて、~中略~ 点検・検証を行う。(※効率的な点検・検証の仕組みの周知期間の確保等のため、10月から施行)
○ サービス付き高齢者向け住宅等における家賃の確認や利用者のケアプランの確認を行うことなどを通じて、介護保険サービスが入居者の自立支援等につながっているかなどケアの質の確保の観点も考慮しながら、指導監督権限を持つ自治体による更なる指導の徹底を図る。


居宅介護支援事業所のみでは調整が難しいと思われるサービス付き高齢者向け住宅等のプランについて指導の徹底というのは、少し無理があるのではないかとも考えられますが、家賃を確認するという記述があるのは、それを介護保険サービス等で補填するという運営形態になっているサ高住等を見つけていこうするものです。今回の記事では管理費/生活支援サービス費の設定を取り上げていますが、本来必要になると思われる費用を利用料等に含めないと、家賃を下げているのと同じ形になるため、家賃と合わせて問題にされやすい部分ではないでしょうか。


月額利用料は高くなりがちですが、先の記事のように管理費/生活支援サービス費を適切に設定し、それでも入居いただけるような魅力を創出できるサービス提供体制を構築していくことが、監視が強化される中での根本的な改善策の一つになるのではないかと考えられます。


ここでの収支モデルは監視強化への対応を収支の面からできるだけ簡便に考えるため、かなり簡素化しています。実際のシミュレーションにおいては、自社の実態や事業計画等を踏まえながら、十分ご検討ください。


住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 ~監視強化といわれる中での運営の検討(1)~

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