介護等サービス提供の管理と記録

先の記事で、特別養護老人ホーム等は、必要に応じ、随時介護等を提供でき、そのための人員基準も明確に定められていること、住宅型有料老人ホーム等のうち一定数が一体的に提供している訪問介護は、随時の介護等に対応できず、随時の介護等に対応するためには、生活支援サービスにあたる人員を配置しておく必要があること、生活支援サービスにあたる人員を配置して行うサービスは、介護保険の適用とならず、全額自費であることから、このための人員を厚くすると利用料が高くなるため、配置しない方向へ誘導されやすいことなどを書きました。

今回の記事では、介護等を行う上で重要な記録の観点から、住宅型有料老人ホーム等を見ていきたいと思います。

介護に重要な記録

介護等のサービスで、記録はとても重要なものです。

  • 介護は、製品のように、目で見て比較することは困難です。
  • また、同じサービスでも、美容院のように提供を受けた後、髪型が変わっているとか、修理のように、その後直っているなどを、受けた側がはっきりと認識することは難しく、サービスをストックしておくこともできません。
  • このように、介護には、サービスの特徴である無形性・不可分性・変動制・非貯蔵性があります。よって、介護では、いつ、だれに、どのような介護を、どのくらい時間をかけて行ったのかということ証明できるものは、記録だけといっても過言ではありません。
  • 介護保険を利用する介護サービスでは、その財源の大部分が社会保険や公費であることなどから、適切に提供したことを証明するために、記録が重視されます。
  • ご本人やご家族への説明においても記録がその根拠になります。
  • また、介護の質という面からみても、どのような介護を行い、利用者の状況はどのようだったかという記録は大切です。

このように、介護において記録は、提供者が行ったことを証明するものであるほか、介護の質を担保するためにも欠かせないものです。介護を必要とする高齢者等が入居する住まい等では、その建物の中で常時介護が行われていますが、当然それらについて適切に記録する必要があります。

24時間365日の生活を支援する上では、実施したことを証明することはもとより、そこで介護等を提供するスタッフが、入居者の状況を時系列で把握することが大変重要で、それによって介護を行うスタッフは、入居者の生活状況や心身の状態の変化等を把握し、切れ目ない介護サービスを行っていきます。これらは、介護スタッフが交代して提供するための情報伝達や、よりよい介護方法に変えていくためにも利用されます。

入居者の状況の変化は大変重要な情報であるため、要介護者の入居を前提とした施設では、24時間の介護の提供状況とその時の入居者の状況等を時系列に記録することができる経過記録が主要な記録として設定されています。介護スタッフは、この経過記録を確認することによって、状態が変化した場合に、それに影響を与えた可能性がある情報を遡って確認したり、いつから排せつが無いか、どのような時に入居者の不安が増幅しやすいかなどを入居者ごと見ていきます。

特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームなどは、介護が必要な高齢者等が入居するための施設であるため、入居者に随時サービスを提供でき、その結果についても随時時系列に記録しやすくなっています。これは、介護の提供に記録を活かしていくためには、望ましい形だと思われます。

一方、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、生活支援サービスとその他の訪問介護サービス等は別のサービスであるため、基本的な記録の形式も異なります。

生活支援サービスは、随時介護等を提供するため、時系列に記録することが可能です。しかし、その合間に提供されるのが訪問介護である場合、訪問介護は、1回について独立した記録を作成するのが基本的な形です。

これは、例えば、事務所の複合機などの機器のメンテナンスサービスのように、サービスパーソンが訪問し、何を修理したかということをサービス提供記録として作成し、事務所の人にサインをもらって控えをお渡しするという要領です。予定を立てて定期的に訪問し、その時に提供したサービスやその状況を詳しく記載する方式が、訪問介護には向いているからです。

よって、一体型の住宅型有料老人ホーム等では、施設の中で本来別に組み合わせるサービスである訪問介護を一体的に提供するため、生活支援サービス等の支援経過と訪問介護の記録が混在することになります。このように、生活支援サービスは経過記録で、訪問介護サービスは別途1回1回の記録として作成し、保管するというのは、24時間の入居者の状況を把握するためには、記録の確認や管理が複雑になりやすい傾向があります。

分離型で運営している住宅型有料老人ホーム等の場合に訪問介護サービスを利用する場合も同様の記録形態となりますが、これは自宅で生活される場合と同様のサービス提供形態であるため、一体型に比べれば、制度の趣旨に沿ったものと言えます。

さらに、別の記事で書いたように、特養等における介護等は、随時必要に応じて提供できるため、その提供に沿ってしっかりと記録を作成していれば、記録の不整合は発生しません。しかし、訪問介護サービスでは、予め決められた時間に、決められた時間数、決められた人だけにサービスを提供するため、他の入居者等が一緒に暮らす住宅型有料老人ホーム等でナースコール等にも対応しながらそのような記録を正確に書いていくことが難しい場合もあるようです。

介護保険外サービスである生活支援サービス等を提供するための人員を厚く配置していれば、生活支援サービスである随時の介護やナースコール対応などは、その生活支援サービスのための人員に任せ、訪問介護のための人員は訪問介護サービスに専念できる可能性が高まり、記録も別々ではあるものの、内容が混在するようなことは無くなると思いますが、やはり、費用面を考えると人員の配置は最低限度となりやすいでしょう。

これは、住宅型有料老人ホーム等で働く介護スタッフを悩ませる、もう一つの大きな要因となっていると思われます。

経営者にとっても、これらの実態がどのようで、そこにどのようなリスクが含まれているのかを適切に把握できているかどうかが課題だと思います。


一連の記事

「要介護者の入居を前提とした住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の運営と制度」

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