高齢者向けの住まいの人員に関する基準等

特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、認知症高齢者グループホームなど、要介護者が入居することを前提とした施設は、入居者に介護サービスを当然に行うことを想定しているため、介護職員等の配置人数が利用者の数等に応じて決められており、これを満たさない場合には、介護報酬が減額されます。

一方、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、要介護者の入居を前提とせず、高齢者が通常の自宅に近い自由度で必要な支援を受けて生活できる住まいということを想定しているため、介護職員等の人員基準は、提供内容や入居者の状況に応じて配置するという緩やかな設定になっています。

本来、これらは高齢者の住まいという共通点はありますが、介護等サービスの提供において目的を異にするため、比較すること自体が妥当かどうかわかりません。

しかし、現在の住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の実態を踏まえれば、要介護者の入居を前提としているところが相当数あります。

要介護者の入居が前提であれば、当然、介護等を行うスタッフが必要です。入浴、排せつ、食事はいうまでもなく、移動や移乗、ベッドでの起居動作など、要介護者の心身の状況に応じ、日常生活の中のあらゆる場面で介助が必要になるわけですから、入居する高齢者にとってもそこで働く介護スタッフにとっても、人員の配置がどのようかということは、極めて重要な点です。


人員に関する基準等を大まかに表にしてみました。

特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、認知症高齢者グループホームは指定権者の指定を受けるための人員基準があり、住宅型有料老人ホーム等は、届出または登録のための設置運営指導指針や登録要件に、人員に関することが定められています。

 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)住宅型有料老人ホームサービス付き高齢者向け住宅
管理者 (施設長)1名 常勤専従者1名 常勤専従者1名 常勤専従者  
医師必要な数基準なし基準なし  
生活相談員基準なし  
介護職員 看護職員介護職員及び看護職員の総数 常勤換算方法で、入所者3名に対し1名以上         看護職員 入所者30人未満:常勤換算1名以上 ~50人未満:常勤換算2名以上 以下略 看護職員のうち1名以上は常勤者介護職員及び看護職員の総数 要介護者3名に対し常勤換算1名以上、要支援者10名に対し1名以上 介護職員のうち1名以上は常勤者   看護職員 入居者30人未満:常勤換算1名以上 ~80人未満:常勤換算2名以上 看護職員のうち1名以上は常勤者介護職員 日中の時間帯においては、利用者3名に対し常勤換算1以上 夜間及び深夜の時間帯においては、ユニットごとに1人以上 ユニットごとに配置する介護従業者のうち1人以上は、常勤   看護職員 基準はないが、連携を評価する制度あり入居者の数及び提供するサービス内容に応じ、次の職員を配置する。 施設長、事務員、生活相談員、介護職員、看護職員(看護師又は准看護師)他  入居者の実態に即し、夜間の介護、緊急時に対応できる数の職員を配置。 介護サービスを提供する有料老人ホームの場合は、要介護者等を直接処遇する職員については、介護サービスの安定的な提供に支障がない職員体制とする。 看護師は入居者の健康管理に必要な数を配置すること。次に掲げる者のいずれかが、夜間を除き、敷地又は隣接地の建物に常駐し、状況把握等サービスを提供すること。 医療法人、社会福祉法人、介護保険法指定事業者の場合は当該サービスに従事する 者。 それ以外の場合は、医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専 門員又は介護職員初任者研修修了者以上有資格者。 常駐していない時間帯は、各居住部分の通報装置にてサービスを提供。
他の人員(略)     
表 高齢者の住まいの主な人員の基準

※2020年11月時点の情報に基づいており制度改正等で改定される場合があります。また、住宅型有料老人ホーム等の設置運営指導指針は、自治体によって相違がある場合があります。

※上記は原則です。条件により、兼務可能などのルールがあります。

※この資料は、住居系の高齢者施設の介護等のための人員の取り決めがどのようかの概要を説明するためのもので、事業の実施にあたって必要な人員基準を明らかにすることを目的とした表ではないため、そのような目的でご覧になる方は、行政の資料等をご参照ください。


上表のように、特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、認知症高齢者グループホームなど、要介護者が入居することを前提とした施設で、介護等を行う人員をおおむね要介護者3名に対して1名以上配置しなければならないと定められています。これは、要介護者の入居を前提とすると、少なくともこの人数が必要になると判断されていると解釈できます。

しかし、住宅型有料老人ホーム等には、このような明確な基準はありません。入居者の実態に応じてどの程度配置するかは、事業者によって大きく変わる可能性があることになります。

要介護者の入居を前提としている有料老人ホーム等では、訪問介護事業所等を併設し、有料老人ホーム等に人員基準がない分を、訪問介護サービスの提供で賄っている場合が多くあります。

しかし、訪問介護サービスは、必要な時間に必要なサービスを個別に提供することを前提としたサービスであり、要介護者の入居を前提とした施設のように、施設内に常駐することを想定したものではありません。よって、訪問介護サービスにも、利用者何名に対して何名以上の介護職員を配置するなどの基準は設けられていません。

これらのことから、要介護者の入居を前提とする住宅型有料老人ホーム等においては、その実態をよく見ないと、必要な人員数がいるのかいないのか、そもそも必要な人員はどの程度が妥当なのかということを判断すること自体が難しく、入居される入居者にはもちろん、そこで働くスタッフにもわかりにくい状況になっています。

介護事業は、運営に係る費用の50~80%程度が人件費で、極めて労働集約的な事業です。他の事業のように、類似する業務を集約し同時に行うことで効率を上げるとか、IT化により生産性を上げるといったことにも限界があり、AIやロボットが、その多くを担ってくれるというような時代にならないない限り、どうしても人手がかかります。

介護事業において、人員の数と質は、入居者にとっても働き手にとっても大変重要です。

住宅型有料老人ホーム等が、バリアフリーや緊急通報、生活上の支援などを必要に応じて利用しながら、自由度が高い生活ができるという、もともと想定された運営方法の自由度を保つためには、人員基準等は緩やかな方がよいでしょう。しかし、実際には要介護者等のみの入居を前提とした運営が行われているという実態を考えれば、要介護者に対する介護の安心・安全が確保できるという状況を構築する必要もあります。

このような、入居者への影響が少なくなく、事業者もスタッフも制度という基本的な部分で迷う状況については、介護保険制度が成熟していく中で、改めて現状を明らかにし、検討を加えていく必要があるように思います。


一連の記事

「要介護者の入居を前提とした住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の運営と制度」

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