ボールをスティールされる、されないの構図

メンタル面のプレーへの影響

私は学生時代、部活でバスケットボールをしていた。(ちなみに、私がお目にかかった方々にこう言うと、とてもバスケットボールをしていたとは思えない、と、一様にそんな反応が返ってくる。バスケにしては、背が小さく、幅がありすぎることが原因らしい)

ややリードして迎えた第4クオーター、残り時間は5分、逆転を狙って相手がオールコートプレスを敷く。当然、こちらがフロントコートにボールを運ぶ前にスティールやインターセプトをし、速攻をかけ、できるだけ早く、得点を重ねることを狙ってくる。

相手のゴールが決まり、エンドからスローイン、コート内にボールを入れるときにもディフェンスのプレスがかかる。味方のスクリーンでなんとかディフェンスを振り切ってボールをもらい、ドリブルでフロントコートを目指す。ディフェンスは、自分の目の前で腰を落とし、まっすぐにボールを睨みスティールを狙っている。そんな場面。

「ボールを取られたらどうしよう・・・」こう思ってしまったら、もうフロントコートへボールを運ぶことはできない。

思わずこんな風に考えてしまうような緊張を強いられる場面、自分の中ではもう恐怖心のほうが大きくなっている。一瞬でディフェンスの手がボールへ伸び、ボールが背後へ飛ぶ。それを見たディフェンスはいっせいに速攻をかけ、相手のレイアップシュートが決まってしまう。そして、一度恐怖心が芽生え、スティールされてしまったら、なかなか切り替えは難しい。そして、またスティール、試合の流れが一気に相手側へ行ってしまう。フロントコートへボールを運べなくなったら、もうガードとしての役割は果たせない。申し訳ないやら情けないやら、立っていられないような場面である。監督はすぐさまタイムアウトを取るだろう。

なぜ、恐怖心に襲われた途端に、ボールが運べなくなるのだろうか。

恐怖心は、体全体を緊張させる。自分が何をやっているのか、どうプレーしていいのか分からなくなる。様々な要素が瞬時に絡み合い、パフォーマンスを一気に下げる。

体のポジションも変わっていることがある。恐怖心から腰が浮き、上体が起きてしまう。そうすると、ディフェンスとボールの距離が縮まり、スティールされやすくなる。これは、ゆっくりと体を起こしてドリブルする、ディフェンスが遠いときのポジションに近い。
フロントコートにボールを運ぶために、純粋に相手ディフェンスを突破しようとドリブルのスピードを上げるとき、当然体は前傾姿勢だ。自然にボールは相手ディフェンスから遠ざかり、手は届きにくくなる。

恐怖心で上体が起きる

重要な場面でのパフォーマンスにおけるメンタル面の影響

このようなことは、スポーツに限らず、文化系の発表会などでもあるだろうし、当然、仕事をやる上でも起こりうるだろう。メンタルの状態が、表情やジェスチャー、会話などにも影響を与え、パフォーマンスが落ちてしまったり、緊張が体を硬直させたり。また、どれくらいポジティブに考えているかが、フットワークの軽さに関わっているなどということも往々にしてあるかもしれない。

如何にして恐怖心や邪念を振り払い、目的に向かう意識に集中できる状態をつくって、維持するか、それには目的達成のための知識や技術も必要だし、経験や自信も関わってくるだろう。こんな風にみてみると、スポーツなどにおけるメンタルの影響には、社内の人材育成やコミュニケーションに関わるヒントがたくさんあるかもしれない。
繰り返し行う訓練や緊張を強いられる経験の積み重ね、そしてそれらをくぐってきたという想い、こういったものを社員にどうやって蓄積させるか。こういった工夫を重ね、すこしづつ実力を発揮できるようにしていくということは、会社の仕組みのツボの一つであり、人材育成担当者の腕の見せ所でもありそうだ。

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