部下に期待するということ

部下は組織内での振る舞いをどのように決めるか

部下への期待には、しばしば上司のエゴが含まれます。
部下が、期待に沿った行動をとるかどうかは、詰まるところ部下の自身の行動に対する意思決定や動機付けに拠るもので、組織の上司と部下という関係であるからといって、その基本的な構造が変わるものではありません。

しかし、そのベースには、例えば

①いわゆる一般的な社会人として組織内における振る舞いや対人関係に関する概念や、
②とはいえやはり収入源を失うわけにはいかないとか、
③敢えてリスクをとって現在の組織を離れる必要もない、

などが影響して、概ね上司の期待、指示などを尊重しつつ部下は動いているという構図があるでしょうから、多くの場合、組織や上司と部下という基本的な機能が成立しています。

それでも、少なくとも先に挙げた①~③が、絶対的なものでないことは、上司が(たとえオーナー社長であっても)自身の事業意欲や帰属意欲を見直してみれば想像できます。

対人関係における振る舞いや社会人としての概念は、育成環境に影響を受けますし、収入源を失うリスクの捉え方は、個人の力量のほか、家庭等の状況によっても異なるはずです。現在の組織を離れることに伴うリスクの捉え方は、現在組織で得られているものと、離れることによって得られる見込みとの天秤でもあります。

経営者でも、自身が経営者として得られている価値と他の選択をした場合に得られるであろう価値との天秤があり、その上で揺れることがあるはずです。社員を路頭に迷わせることはできないから自分は経営者であり続けなければならず、天秤は存在しないとかいうのは、自身にとっての価値の認識が違うだけではないでしょうか。

天秤には必ずもう一方との比較が含まれる

話を戻しますが、部下が命令を聞くかどうかは、単に上司だからとかいうことではなく、こういったことの上でバランスされることです。

そうすると、

①社会人や対人関係の常識からみても、上司の指示にこの程度対応しておけばよい、または、これは聞かなくても大丈夫だろう、 とか
②自分は収入源となる仕事を選択できる、また選択できるように学び続けるから、現在の組織に多くの意識や時間を割くことはない、とか
③現状や将来を考えれば、現在の職場に固執することはない

などという風に部下が考える可能性が、当たり前だが常に存在しているということです。
部下が組織で活躍する、しないや、組織に残る、または去るなどの理由は様々ですが、このように考える社員は、コミュニケーションに問題が無いならば、組織としては残したい人材である場合が多いのではないでしょうか。

社会や対人関係上に無関心で、現在の組織に固執せざるを得ない者ばかりが組織を構成しているのでは、その組織の将来はなんとも心許ないものです。変化の激しい環境を乗り越えていくために、社会との多様なつながりや自身の客観的な位置づけなどを踏まえて自身や組織の行動を俯瞰し、職場を選べるように学び続けるような人材をつなぎ留められるかは大きな課題の一つでしょう。

部下に期待する想いには、自身の価値観に基づく望ましい行動への対応が多分に含まれている場合があります。上司が発揮すべきリーダーシップで重要なのは、部下が考える天秤と組織の天秤とをすり合わせ、組織の目的へ向かう方向へ部下も動機付けられるようにすることです。部下に対して、部下自身の天秤を尊重しながら良質の投資のような感覚で接し、環境を提供できるなら、期待は部下にとっても前向きに働き、時には、上司の期待を上回るリターンが得られるかもしれません。

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