人材育成の悪循環と研修のあり方

 ​人材育成の悪循環

多くの研修記録には一見前向きな効果を感じさせることが書いてあるのに、実際に研修会場に足を運んでみると受講者がそれほど意欲をもって受講しているようにも思えない(相槌はうってますけど)ような企業にちょくちょく出会う。そのようになる理由は様々だが、形式に走っているような共通点が見える。

このところ、たまたま会社の代表者が持論を展開する時間が多く取られている研修を続けて拝見した。

メディア等が発信する雰囲気などからも、最近では「やはり、上を目指して頑張らないといけない。頑張ろう!」というような気風が改めて高まってきているように感じる昨今、企業の研修もまた理念型というか、精神論重視というようなものが流行りだしているのか?と思ってネットを物色していると、「これからの企業内研修のあり方(西川秀二:三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング「季刊 政策・経営研究2009 vol.2」)」という記事にあたった。

サービス業を中心に、実際に人が足らず、店を開けられなかったり、シフトを柔軟にこなす社員に負担がかかる状況が現に発生しており、そのような中での人材育成の困難さを抱えている企業も多いが、「これからの企業内研修のあり方」では、この人材育成に関わる悪循環を次のように紹介している。

「ぜひとも避けるべき人材育成の悪循環」
人材育成の悪循環

「これからの企業内研修のあり方(西川秀二「季刊 政策・経営研究2009 vol.2」)」より抜粋

2006年の記事だが、それから10年が経過し、まさに現在はそれらが顕在化した状況になってきてはいないだろうか。

さらに、この記事の中では「今の若手社員は、自社の帰属意識はかつてに比べると薄れているといわれるが、その反面、自分の市場価値(辞めても食っていける価値)を磨くことには貪欲」で、それは、「バブル崩壊後、大手の銀行や証券会社が破綻する光景を当時まだ中高生として見ていた彼らは、「どんな事態になっても他社で転職できる”ポータブルスキル”」の習得の必要性を植え付けられてきたため」だとしていた。そして、中堅中小企業が、きたる労働力人口減少に対応していくためには、社員能力向上を目的とした教育体系の充実が最も効果的な施策のひとつだと論じている。

人材育成の悪循環に陥ってしまえば、そこから抜け出すのはなかなか困難なように見えるが、どこかでその負のスパイラルを止めなければならない。中には研修に出すことそのものが現場の負担にさえなっている場合もあるが、それでも時間を確保して研修を行うのだから、その時間に何をやるかはことさら重要になる。今後もより効果的な研修を検討していく必要が、どの企業にもあるのだろう。

 

業績や社員のことを考えるなら、やはり効果的なやり方を

さて、入り口は勢いを重視した理念型の研修に立て続けにあたったので、現在の研修の流れはこういう方向?というところからだった。確かに、このところあまりにも従業員を気にしすぎて、押し出しの強い研修を行ってこなかったと感じる社長さんがいて、改めて理念や想いを強く押し出そうとされている向きもあるかもしれないが、研修も進歩していて、戻らない部分はもどらい。今回紹介した記事には、研修の効果が上がる方法と効果がなくなる方法も書いてあるので、ご紹介する。

こうすれば研修の効果はさらに上がる。
  • 目的を明確にする(研修を行うに至った背景、スキル習得か意識改革か など)
  • 自社の実情や実態を、包み隠さず外部講師に公開する。
  • 参加者になるべく発信させる(発表やロールプレイ 等)
  • 建前ではなく本音で議論してぶつかりあうこと、そういう雰囲気づくり
こうすれば研修の効果がなくなる
  • 対象者を絞らずに多くの人を集め、目的が見えなくなる。
  • 社長や幹部の持論の展開が強くなされ、研修の最終ゴールがみえなくなってしまう
  • 研修が終わった後、何らのフォローアップもしない。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング企業内研修室インストラクターから収集したヒアリング結果」より抜粋

 

中小企業の社長さんや研修担当者の方の中には、耳の痛い方もおられるのではないだろうか。
業績につながれば、社員の幸せにつながれば、社会貢献につながればとは強く思っている。でも、それについて持論を展開するのではなかなか伝わらない。実は社長自身もそれを感じている・・・。そんなときは、改めて参考にされてみては。

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