抜き打ちテストはしない
抜き打ち・覆面テストの是非
OJTで、一定期間後にそのチェックをしている組織はたくさんあると思う。このOJTなど、育成目的で行われる施策の運用面について、様々な組織に伺ったり、状況を聞いたりする中で、気になっていたことがある。
「こう教えたのに、こないだチラッと見ていたら、やってなかったよ。だから、この項目はできていないと判定したからね。」
これは、公式なOJT項目の実施確認なのに、いつ、どの範囲について確認するかを対象者に告げずにチェックし、その結果を公式な結果に採用してしまっていたものだ。
さらには、OJTチェックの結果も告げずに、勝手に研修期間終了や延長の判断をされているところもお見受けする。
OJTチェックもその他の評価も、社員が仕事を一人前、またそれ以上にできるようにするため、成長させるためにある制度なはずだ。それでも、抜き打ちチェックや覆面テストのようなことになるのはなぜだろうか?
あるOJT責任者に聞いてみた。すると
「テストではできても、それ以外の場面ではやれていない社員がたくさんいる。テストでできることが目的ではなく、日常業務の中でできるようにしなければいけないのだから、むしろ抜き打ちや覆面チェックの方が妥当だと考えている。」という答えが返ってきた。
ほかに同じようなチェックを行っている組織がどのように考えているかまでは逐一確認はしていないが、なるほどこのような理由が上がるのでないかと推測している。
できない理由はなんなのか?
「テストではできても、それ以外の場面ではやれない」この原因はなんだろうか?
ある手順が適切に実施できるというのは、
- その手順を適切にやれる技能を身に着けていて、
- それをやろうと動機づけられ、実際にやっている
状態であろう。
このうち、実際の業務の中で、主に技能を身に着けていくのがOJTである。もちろん、そのプロセスでは、OJT対象者のモティベーションなどにも配慮がなされるが、基本的には知識があり、手順を頭で知っている状態から、実際に業務としてできる技能を身に着けた状態にすることを目的としているはずだ。
「テストではできる」ということは、「実際にできる技能を身に着けた状態」になっていると考えられる。
ということは「テスト以外の場面でやれないのはなぜか?」というところにこの問題の原因がある。緊張などで、本番に弱いなどもあるかもしれないが、大抵は、できるのに「やろうというモティベーションが働いていない」のだ。
「テストではできても、それ以外の場面ではやれない」のは、
- OJTのチェック結果は「○」
- それをやろうと動機づけられているかが「×」
という状態だということになる。
それなのに、OJTチェックを覆面等で行って、OJTチェックの結果を「×」とし、対策を打ったところで、問題は解決しない。
目的は人材育成 ~信頼の醸成を大切に~
むしろ、できる技能はあるにも関わらず、それを実際の業務でやろうと動機づけられていない社員に対して、抜き打ちテストや覆面テストの実施はマイナスである。
その手順を守るよう動機づけられない原因として考えられるのは、モラールの低下だ。にも関わらず、抜き打ちや覆面チェックなど、リーダーへの信頼の醸成やチェックの効果などからみて妥当とは言い難い方法により評価をつければ、いっそうモラールは低下するだろう。リーダーへの信頼や会社への信頼は、モラール向上、モティベーションに影響する極めて重要な要素であるといっても言い過ぎではないと思う。
やはり、OJTチェックは、
- 事前に実施日や範囲を伝えて実施する。
- それまでの期間は、なんとか本人が合格点を得られるように、チェック者の含めて支援する。そのうえで、チェック自体は基準通りにきっちりと行い、その結果をフィードバックし、できないところをまた一生懸命教える。
このようなスタンスがとても大事なのではないだろうか。