2021(令和3)年度 介護報酬改定から抜粋 「サ高住等における適正なサービス提供の確保」
2021(令和3)年度の介護報酬改定概要が発表されましたが、「サ高住等における適正なサービス提供の確保」に関わる部分について抜粋し、その概要を掲載します。
当サイトでは「要介護者の入居を前提とした住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の運営と制度」に関わる一連の記事で、以下の3点を課題に挙げました。
1.住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅には要介護者等の人数に応じた人員配置の定めがない。
2.住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の利用料は、複雑でわかりにくい
3.住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅で多くの介護を提供する場合、運営方法によっては、サービスの提供や、その質を確保するための管理が複雑になりやすい。
このうち、「2.住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の利用料は、複雑でわかりにくい」について、「制度の意図に沿って住宅に付随するサービスを提供するための人員を適切に配置して、その費用を自費(介護保険外)の生活支援サービス費や管理費として入居者からもらうよりも、負担割合に応じて自己負担する介護保険サービスの利用量を増やした方が、利用者の負担は軽くなり、事業者の収入も確保しやすくなる。」ということをご紹介しました。
2021(令和3)年度の介護報酬改定では、この部分に関してさらなる適正化を図るための改定がなされることとなったと思われます。
今回の介護報酬改定の全体像は、上図の通りですが、この中の右下、「5.制度の安定性・持続可能性の確保」に含まれる改定の一つに、「サ高住等における適正なサービス提供の確保」が含まれます。
この部分を順に詳しく見ていくと、下図のように記載されています。(黄色いマーカー部分)
「サービス付き高齢者向け住宅等における適正なサービス提供を確保する観点から、区分支給限度額の利用割合が高い者が多い場合に、サービス付き高齢者向け住宅の家賃の確認やケアプランの確認を行い、指導監督権限を持つ自治体による更なる指導の徹底を図る」という記載があります。
これは、全額自己負担となる家賃等の固定的な費用を安く設定する代わりに、公費や社会保険料で賄われ、一定の割合を負担すれば足りる訪問介護や通所介護等の利用を増やすことで収益を確保する運営形態の事業者が存在することから、そのような運営方法について指導を行い、適正化を図る改正を行うということです。
ここでは、区分支給限度額に対する利用割合の高さや家賃の確認を行うと記載されていますが、訪問介護等のサービス費と直接対応するのは、生活支援サービス費や管理費です。よって、これらも合わせた費用がどの程度に設定されているかを確認することが妥当なように思います。この辺りは、今後どのような手続きとなるのかを見ていく必要があると思われます。
高齢者の介護の担い手として適切な運営を行う多くの事業者が継続的に住宅や介護等のサービスを提供し続けられるよう、少子高齢化が一層進む見込みの中で公費が適正に使用され、制度の持続可能性が確保されることで、将来にわたって必要な人に必要なサービスが提供される可能性が高まるのであれば、それはとても好ましいものであると思います。
今回の改正に伴って、実際にどのような確認手続きが行われ、指導についてもどこまで踏み込まれるのか、現時点では明確ではありませんが、運営を行っている事業者としても、貴重な社会資源としての自社事業を活かしていくために、今後の動向を注視する必要がありそうです。
一方で、費用の設定に関する部分は、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームが抱える課題の一部であると考えられます。サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームがどのような運営をしているかは、入居者一人ひとりへの住宅サービスの提供、使っている介護保険サービス等に関するケアプランの内容、実際のサービス提供などをアセスメント結果等に照らして確認してみないと把握することは困難です。よって、より多くの人が制度の内容について具体的に知り、関わり、考えることができる機会を創出することで、本当の意味でサービスを選べる制度となるような工夫が今後も求められていくものと思われます。
以下の記事で、サ高住等への監視強化への対応を収支モデルから検討しています。
「住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 ~監視強化といわれる中での運営の検討(1)~」
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