絶対に失敗させたくないタイミング
努力を重ねて仕事を少しずつ覚え、もう少しで成果につながりそうだなと感じた時
また、スランプに陥ったスタッフが、そこを抜けだそうともがいている、そして、今取り掛かっている仕事の小さな成功がスランプを抜け出すきっかけになるのでは?と感じた時。
このようなタイミングは、何としても何らかの成果を(たとえ小さな成果でも)スタッフに感じさせたいタイミングでしょう。
このような時、リーダーは捨てられる他の仕事は全部捨ててでも、全力でそのスタッフを支援したいところです。
多くの組織では、どのような力量を獲得してどのような成果を上げればステップアップしていけるのかという、キャリアの段階などを示しておられるでしょう。スタッフが自身のキャリア設計と組織のキャリア設計を重ね合わせ、具体的な道筋をイメージできることは人材育成においてとても大切だと思います。
しかし、組織が設定するキャリアの段階をクリアするには、その手前にたくさんの小さな段階があります。
キャリアの段階が7階層や9階層などと設定され、1階層から2階層へ、また3階層から4階層へと経路が示されていても、当然いきなり1つの階層をクリアできるわけではありません。ちょうど建物の階段のように、1階から2階へ上がるには、10段の階段を上らなければならず、それを繰り返してより上の階へと上がることができます。
そしてスタッフは、組織が設定した階層をイメージしながら、実際にはその階層をつなぐ階段を一歩一歩上がっていきます。
メンバーの基本的な力量や経験、心理的な状態等によって、どの階段で躓くかは異なる可能性がありますし、時には、その小さな階段を1歩上がるのにとても苦労し、挫折してしまいそうになることがあるかもしれません。
スタッフがもう少しでその1歩を越えられそうに見えるとき、たとえそれが組織やそのスタッフの上司やリーダーにとって小さな1歩でも、そのタイミングこそがスタッフを重点的に支援する重要なタイミングです。
様々な業務の中で満遍なく人材の育成にパワーや時間を割いていくことは難しいですが、躓いた小さな1段を超えられるかどうかという要所では、全力でそのスタッフを支援し、是非成功を経験させましょう。その経験は、次の大きな課題を克服する際の自信につながったり、前向きに課題を捉える意欲になっていくでしょう。
また、たとえその時成果につながらなかったとしても、その時に受けた支援は、その後のステップアップの過程で本人を支える経験になり得ます。
ここはこのスタッフにとって重要な場面だなということがわかるためには、本人にとって何がより大きな課題になっているのかを細かくみる必要があります。
このような時、上司やリーダーが積んでこられた経験は、ちょうどゴールまでの道筋を示す地図や道標のような役割をし、障害物の場所やそれにぶつかるスタッフの心境を理解することを助けてくれるのでなないでしょうか。そして、ここぞという時に支援してくれるという心強さは、育っていくスタッフにとってかけがえのない支えになると思います。