新型コロナウイルスと求人・求職の状況
新型コロナウイルス感染拡大の影響により雇用・就業状況も大きな影響を受け、2020年1月以降、完全失業者数は増加し、有効求人倍率は低下しました。しかしながら、建設や介護、サービスなど、感染拡大以前から人材不足が顕著な職業では、コロナの影響を受けても引き続き求人数が求職者数を大きく上回り、人材の確保が簡単ではない状況にあるようです。
2020年は新型コロナウイスの感染が世界的に拡大し、日本でも緊急事態宣言の発出、不要不急の外出の制限、飲食店等への営業時間の短縮要請など、日常生活はもとより企業にも大きな影響を与える事態になりました。
2020年8月には内閣府が4月から6月までのGDP(国内総生産)を発表しましたが、実質伸び率は年率換算マイナス27.8%とリーマンショック(2009年1月-3月:-17.8%)を超え、1980年以降最大の落ち込みになったと報道されました。
このコロナ禍では、前述の営業時間の短縮をはじめ、移動の自粛要請等に伴って可能な企業では在宅勤務が試みられるなど、これまでの事業運営の常識の延長上では判断が難しい場面にそれぞれの企業等が晒されることになりました。組織内部の人同士、組織とそれをとりまく外部の人々が、これまでとは違ったコミュニケーションを強いられる中で、そこで発生する様々な問題についてどのように対応するかの判断に迷い、調整に時間を割かれる状況が至る所で発生しました。経験が少なく個々の健康に直接かかわる事態であるだけに、組織は事業とそれを支える個々の人材をどうすれば守ることができるかという難しい問題に直面することになったのではないでしょうか。
雇用・就業への新型コロナウイルス感染拡大の影響
企業等、組織の事業が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ければ、それを支える人材にも当然影響が及び、この間、雇用環境に関わることについても様々な報道がなされました。新型コロナウイルスの感染拡大は、雇用・就業に大きな影響を及ぼすことが懸念されていることから、公的機関のウェブサイト等においてもこれらに関する統計資料が公表されています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構のウェブサイト(独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT))では、「新型コロナウイルス感染症関連情報: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響」として、2017年から2020年の失業者数等様々な統計が公表され、参考資料といてリーマンショック後の指標との比較も見ることができるようになっています。
このサイトの国内統計によると、完全失業者数及び完全失業率の男女計(季節調整値)は、コロナ前の2019年12月の完全失業者数152万人(完全失業率2.2%)から増加傾向となり、2020年10月に同214万人(同3.1%)とピークを迎え、12月は同204万人(同2.9%)となっています。一方、合わせて示されている参考資料を見ると、2008年9月のリーマンショック前後では、2008年8月に270万人(4.1%)だった完全失業者数(完全失業率)は、2009年8月には358万人(5.4%)になりました。
有効求人倍率では、2019年12月の1.57倍でしたが2020年1月から下落し、9月に1.03倍となり、12月は1.06倍とやや持ち直しています。リーマンショック前後では、2008年8月の0.86倍から下落し2009年8月には0.42倍となっていたようです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響は、業種によりプラスマイナス、大小などが大きく違うと考えられることからその厳しさは様々だと考えられますが、リーマンショック前後の状況とは異なり、感染拡大の影響により雇用状況は悪化したものの、全体としては求人数が求職者数を上回っていることがわかります。
業種により依然として厳しい人材確保
ここからは、もう少し範囲を絞って雇用等への影響を見てみたいと思います。
以下は愛知県における職業別有効求人倍率(季節調整値)の2019年4月から2020年12月までの推移です。
これを見ると、新型コロナウイルスの影響が出はじめた2020年1月から有効求人倍率は職業を問わず下落傾向を示していますが、建設・採掘、介護関連、サービスでは、約3から8倍(2020年12月値)と依然として高い有効求人倍率となっていることがわかります。
近年の人手不足の傾向に加え、職業によりかなり人材確保の状況に差があるらしいことが見て取れ、コロナの影響で完全失業者数が増加しても、求職者にとってはそれまでとは別の職業を選択するのはハードルが高く、求人・求職をマッチさせるのは簡単ではない状況にあるようです。
新型コロナウイルス感染拡大による雇用等への影響を見てみると、人材の確保が困難な職業に属する組織では依然として人材の確保は容易ではなく、如何にして他の職業に就いていた求職者に選んでもらうかということが、引き続き大きな課題になっているようです。
注)この記事は、国内統計の値を季節調整値に統一する変更を行い、完全失業者数・完全失業率及び有効求人倍率の国内値グラフを追加しました。(2021年2月11日)