配慮して話しづらいリーダーになってしまう

意見を聞くが、判断ができない

意見を聞く

リーダーとして、チームをまとめ、よいパフォーマンスを発揮したい。
多くのリーダーは、会社から与えられた職務を全うし、リーダーとして成果を求めたいと思っています。

リーダーがチームをまとめようとするとき、メンバーとのコミュニケーションはとても重要なものです。そのような中で、リーダーとして円滑なコミュニケーションのベースを築くために、メンバーと良好な人間関係を構築したいと思う方も多いでしょう。

良好な人間関係の下でチームづくりをしていくためには、メンバーに必要な配慮をしながらリーダーシップを発揮していくことが当然必要になってくるわけでしょうが、配慮の仕方によって、時にはメンバーから話しても無駄と思われるような事態に陥ってしまう場合があるようです。

リーダーは、風通しのよいチームを作ろうと、できるだけメンバーが自分に意見を言えるように仕向けようと頑張っていました。
リーダーは、前任者から交代するとき、このチームは、皆が自身の意見を言えない状況になっていると感じており、自身はその点を改善しながらリーダーシップを発揮していきたいと思っていたのです。
それで、自分は意見を言ってほしいから、何かあれば言ってくれというスタンスで、メンバーに常々話をしていくことを続けていました。

そうする中で、徐々に意見がでるようになってきたのはよかったのですが、次には意見をいう人と言わない人に、はっきりと分かれる状況が起こってきました。
リーダーは、できるだけ皆の意見を聞いて判断していきたいと思っていたので、意見を言う人に、メンバーに諮ってから決めるからということが多く、またメンバーに諮る場合でも、多くの意見をいう人同士の意見が対立すると、明確にジャッジできない状態になっていってしましました。
また、意見を言わないメンバーがどのように考えているかということも気になっており、何か意見はないかと問いかけていましたが、なかなか明確な意見は聞けずにいました。

そのような状態が続くと、次第に意見をいうメンバーからは、意見を言えというのに、結局なにも判断はしてくれない、となっていったのです。

こうなると、意見をいうメンバーはその意見に対して明確な判断がされないため不満を持ち、意見を言わないメンバーは何を考えているのかわからず、膠着状態に陥ってしまう場合があります。
これが進んでいき、リーダーがより自信を失っていくと、チームへの関与そのものを避けてしまい、放任のような状態にまでいってしまう場合さえあります。リーダーシップが発揮されず放任状態になれば、チームの目的に向かう意欲は低下し、業績の達成は難しくなっていくでしょう。

リーダー自身の特性等も影響を与えたでしょうが、この例におけるリーダーは、判断をすることがなかなかできませんでした。
しかし、どうして判断ができなかったのでしょうか?
本人の特性によるものについてはある程度仕方がないとして、どうすればより判断しやすくなるかを少し考えてみたいと思います。

リーダーの判断を助ける情報

判断するためには、情報が必要です。
では、どのような情報があれば判断ができるでしょうか?
(情報を持たずに判断すると、もし判断がなされたとしても、その判断の妥当性を疑われるようになります。)
業種よっても当然変わりますし、明確に知っているほうが良いことと、数多くの情報の集合から無意識に判断できているようなこともあるでしょうが、以下のような情報が頭の中に入っていると、判断に役立つのではないでしょうか。
そして、これがメンバーに聞かなければわからない類の情報である場合には、それを質問する、またはデータは記録等を確認するようにすることが大切だと考えられます。
・そもそも、課題や問題は何か、現状はどのようか
・何が原因として考えられそうか
・得たい成果と成果を得るためのキーファクター
・顧客等の要求事項や顧客、品質への影響
・同業他社の状況
・その業務に関わる固有技術や標準的やり方や最新のやり方などに関する情報
・判断に関わる業務の実施状況や実施のためのルール、またそのルールがそのようである理由
・メンバーへの影響
・事業計画や予算
・方針等
・会社は組織の制約で、その判断に影響すること
・法令や競合他社、別のチームの状況で、その判断に影響すること
・管理等に関する知識

判断に必要な情報には様々なものが考えられ、網羅的に知っておくのは難しいでしょうが、このような情報を日常的に頭の中に入れておけば、判断の助けや判断時の自信つながると思います。
また、判断の時にこのような情報を使うことを意識しておくと、判断理由を明確にできる場合が増えます。
こういったことを積み重ね、妥当な判断ができる場面が増えていけば、メンバーのリーダーへの意識が変わり、他のリーダーシップへも影響するのではないでしょうか。

ただ、どうしても判断に迷う状況もあり得ます。
判断に迷ったら、同僚や上司に聞いても構わないし、もちろん部下(メンバー)にきいてもおかしいことではありません。そのようなことをくり返し、判断できるようになっていけば、リーダーシップは確立できていきます。

何が聞きたいのか? 質問の意図とコミュニケーションの効果へのこだわり

他方で、意見を言わないメンバーへ、どのように問いかけるかということも、工夫が必要かもしれません。意見を求める場合に、漠然と何かないかという問いかけはあまり良いとは言えません。特に意見を言いにくいメンバーへは、具体的に判断したい内容を伝え、場合によっては選択肢を用意し、小さな質問を繰り返すことから始めてみるとどうでしょうか。ただし、質問は具体的にするのであって、易しい質問(答えが分かりきった質問など)をするということではありません。

具体的な質問の方が、メンバーが答えやすいという技術的な点以外にも、さらに重要な要素があります。
業務の合間に時間をつくり意見を聞くということは、メンバーを信頼し、メンバーの力を借りて新たなプランを描いたり、問題を解決したいという行動の現れであり、メンバーへの意思表示です。メンバーは、チームの業務に役立つために自分の意見を聞いてくれるから協力しようと思います。リーダーがそのような意思を持ち、問題解決等をしたいと考えているなら、リーダー自身もそのテーマついて考え、いくつかの代替案や、代替案とまでいかなくれも、どこの情報が不足しているかなどを吟味するのではないでしょうか。そしてこれはリーダーが問題解決等を本当にしたいと思っているのかというバロメーターになり、メンバーが意見を交わすモティベーションにも大きく関わります。
コミュニケーションをとるために意見を聞くというスタンスでは、そもそもチームは何のためにコミュニケーションを必要としているのかという視点が希薄になり、意見の聞き方も曖昧になりがちです。チームの目標達成や課題解決のためにリーダーがそれらを吟味すればするほど、メンバーに意見を求めたい点は明確になり、メンバーもどのような視点で意見を求められているのかが理解できます。
そうすると、本当に意見が交わせるチームになっていく可能性が高まっていきます。

メンバーに配慮し、コミュニケーションをとる中で、判断を迷う場面は多々あるでしょう。しかし、本当にメンバーに配慮するためには、自身がリーダーを務めるチームが、少しずつでもそのチームの目的に向かうことが必要です。そうでなければ、そのチームの存在理由が欠落し、そのチームが属する組織の中での評価に影響を与えかねません。自身が配慮を重視し、迷う傾向があると感じているリーダーは、目的に照らし、判断材料となる情報を十分に収集することに取り組んでみられてはいかがでしょうか。

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