魅力的な会社のカラーとその功罪

会社のカラーと人材

会社のカラーが強く出るのは、中小企業の魅力の一つでもある。しかし、次のような場面では、そのカラーが足を引っ張ることがあるように思う。

  • 会社の規模拡大・役割分担の推進による専門分化
  • より精度が高いエビデンスなどを要求される環境への変遷
  • 後継
  • 顕著な人材不足

その職業に就きたい人が殺到する一部の職種を除いては、このような場面で、会社のカラーに直結させた施策によっては求める人材が得られない事態に直面することがある。

例えば、より高度な技能を自ら獲得し、結果、中小企業の規模拡大などの場面で必要とされるような力量を身に着けている人材は、リスクを回避することについても敏感であったり、自主性・独立性と組織活動とのバランスを見ることにも長けていて、結果的に、会社のカラーによっては、選択肢にすら入れないことが起こる。

また、広く多くの人材を確保する必要があるような事業を展開するような場合、仕事と生活のバランスや、仕事に求める価値の傾向などについて、多くの人材に受け入れられる施策が展開されていなければ、仕事を求める層のうち、最初から一部の層しか求人の対象とならないことになる。この時代「社員の幸せは仕事の充実から!」といって、休みにくい風土になっていたりすると、まさにこのような傾向が出る可能性があるのではないか。

 

より多くの層に共通する価値を満たせる施策になっているか? 

自分がどのように生きていきたいかという価値観は、仕事へのスタンスにも大きな影響を与えるだろう。感覚的なものであり、少し毛色の違うものもあるが、思い浮かべてみると次のように様々な価値観がありそうだ。

  • 所属を好み集団規律を重視
  • 仲間たちとわいわい楽しく
  • 家庭での時間を最も重視
  • 一般的な生活を安定的に
  • より良い仕事とプライベートをバランス
  • 高度な専門性で役割を発揮
  • 役職者になる 地位や名誉がほしい
  • より困難な課題の克服にチャレンジ
  • 自主独立し道を切り開く

より発展を目指す中小企業が求めている人材は、どのような価値観の持ち主だろうか。

高度な専門性を人材に求めるなら、その人材は、その専門性の確立には興味があるだろうが、会社のカラーには専門性の獲得や発揮に関わらない限り、興味を持ちそうにない。
生活の安定やプライベートとのバランスを重視するなら、働きやすさが重要になりそうだ。
また、より困難な課題の克服にチャレンジしたい人材は、その課題の困難さは求めても、会社のカラーに合わせるような価値観を持ち合わせているだろうか、そして、自主独立志向なら、やはり将来は自分でと思うだろう。
これらの層はいずれも、会社のカラーに合わせることに神経と時間を費やすなら、より自分の大事にするところへそれらを投入するのではないか。

今更ながらこう考えると、中小企業が今求めている人材の多くは、このようなグループに属するのではないか。また、広く多くの人材を求める場合においても、より多くの層に共通する価値観を満たす必要があるはずではないだろうか。

 

普遍的な制度の上に、独自のカラーを

中小企業の社長の想いはとても大事だし、私はそのような話を聞くことをとても好む。しかし、そのような社長の中には、想いに付随して、人材に纏わる様々な制度や環境が偏っている場合があるとも思う。それでうまくいっていれば何ら問題ない。しかし、せっかくここまで頑張って続けてきた会社があり、それに貢献してきた社員がいるのに、偏った制度が人材の獲得を妨げ、会社の発展を阻害しているとしたら、それはとても残念に思う。

確かに、普遍的な策で広く人材を集めれば、考え方や制度の変更を迫らるなど、社長にもすでにいる社員にも会社の仕組みにも様々な影響があり、どこまでいっても難しい問題だ。しかし、どうか想いと制度、特に労務に関わるものは切り分けてほしい。制度は目的を達するために最も妥当で普遍的なものを選択し、よりよい人材を獲得する。その上で想いを伝え、その社員たちを揺さぶることで、社長が大切にする会社のカラーが光るようにできればいいのに、と、そう願わずにはいられない時がある。

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