生産性の向上を組織の共通目標に
生産性の向上がなければ、分配も増やせません。生産性の向上は、まぎれもなく経営者とスタッフ双方の共通目標であるはずで、これを明確に示しましょう。
中小企業経営では、核業務たる事業そのものの価値を向上することだけを考えたとしても、相当に大きな負荷がかかることは先の記事(「シンプルで具体的な管理指標を」)で述べました。
とはいえ、確かに経営者としては、会社が存続し、儲からなければリスクを取って経営されていることの報いにはならないと考えるのが妥当でしょう。法人の種類によっては、儲かるということは直接の社会貢献に置き換わるかもしれません。配当という概念がない組織にとっては、さらに大きな便益を提供し続けるために余剰を事業に再還元することがテーマになることもあると思います。 となれば、いずれにしても、やはり商売なんだからカネにしっかりとこだわらないということになります。
高い品質への責任が企業に求められる中で、利益(余剰)を生み出し続けることはとても難しい課題ですが、少なくともこの実現には、組織を構成する1人ひとりの事業への貢献が利益に結びついているという体制が築けるかが大きなカギになるはずです。
最終的には代表者の肩に全責任がかかる、だからこそできるだけ分散できるところは分散して、スタッフにも前向きに会社に貢献してもらい組織の生産性を向上させたい。それが貢献してくれるスタッフにも現実的に報いることにもつながるという循環を作る。そして確実にスタッフが事業に具体的に貢献したという根拠を持って、会社や社会にその功績をアピールしたいものです。(実際に様々な企業様とのお付き合いの中でそのように考えておられる代表者の方々とも多く接することができました。)
ここで、スタッフの貢献ということを真剣に考えたとき、単に「客が喜んだ」ではなく、組織として狙った貢献を確かにお客様にした結果、客が喜んだということでなければ、一生懸命仕事をするスタッフを本当のプロとして労うことができるだろうか、という疑問と対峙せざるを得なくなることでしょう。
また、不採算なうえに将来の貢献が見込めない事業をそのまま放っておいて、何も知らずに専門分野を追求し粛々と指示に沿って仕事を進めるスタッフに将来をどう約束するのでしょうか。
「約束なんか、もちろんできないよ」
確かにそうでしょう。100%確実にということは、経営である以上ありえないのだろうと思います。 しかし、出来得る限り約束が実現する可能性を上げるための取り組みを代表者は推進し、スタッフはそのための取り組みに貢献しているという認識を持つ、そこに組織の協力関係やスタッフの貢献意欲の源泉の一つがあることは確実です。