管理会計

経営に必要な情報を日常業務の中から確実に拾う

管理会計は、個々の企業の事業の特徴や形態に応じ、経営に必要な情報を経営層に提供する重要な仕組みです。またこれは、経営層とスタッフを繋ぐコミュニケーションの中核として、スタッフの経営への参画意識や貢献を具体的に示すことができる情報にもつながり、組織のモラールにも影響を与える要素になり得ます。


 

企業内に必須のコミュニケーションは、経営目的達成の為に必要な情報の伝達でしょう。では、その情報とは具体的にどのような情報でしょうか。

管理会計は、この必要な情報を日常の生産や販売、サービス提供活動の中から抽出し、経営に活かす仕組みであり、この仕組みから抽出される情報は、まさにコミュニケーションのネタそのものになります。それでも管理会計についてお話をするとき、

足で稼いでくる方が大事

規模が小さいのだから管理会計のようのものなくても把握できる

管理会計の仕組みを導入しようとしても、役に立つのかどうかがイメージできるまでには至らず頓挫

仕組みだけは導入されているが、何のためにやっているのかわからない

などの意見から、入り口で立ち止まることもしばしばです。 それもそのはず、確かに代表者が一人で良いものをつくり商売していた時には、自分自身の感覚さえ研ぎ澄まされていれば、仕組みとしては必要ない場合も多いのですから。 そして仕組みそのものが金を生むのではなく、経営者さんたちが作った製品、商品やサービスそのものが金を生んでいるのであって、それが間違いなく商売の核です。問題は、売れることによって得られる金で、本当にこの先も経営できる見込みが立つという判断のために必要な情報がつかめているのかということです。 ”会計”といえば、税理士の先生と膝を突き合わせて節税について考える、これが”会計”を唯一具体的に経営に使う場面という方も多いでしょう。もちろん、事業計画と併せて、銀行への説明資料として会計情報を活用されている方もまたたくさんおられると思います。しかし、前者は税金の計算を目的としていますし、金融機関は事業計画を出せとはいうものの、あくまでも保全をより現実的に、効率的に考えています。つまり、会社を経営していくための現状を本当にはっきりと理解しようとする人は、経営者しかいないのです。

 

管理会計イメージ

 

中小企業に本当にそのような仕組みが必要かと問われそうですが、経営者が会社の現状を把握し、出来る限り事実に基づく意思決定を行うために、また、スタッフの協力をえるためのコミュニケーションにおける中核的な情報を提供する仕組みとして、非常に有益だと思います。

管理会計は、有名な経営指標の分析だけに留まりません。もちろんこれも大切ですが、ここで取り扱う管理会計の仕組みは、自社の経営の成果に直結する各プロセスの状態を効率的に把握できる指標を設定し、管理しようとするものと捉えています。

 

管理会計の導入や見直しにおいても、範囲・内容・運用方法などは様々に設定でき、特に大切な情報や事業の範囲に絞って導入するなど、会社に合ったものを選択できます。大規模な仕組みの導入というよりも、「どうしても必要な情報を、出来るだけ要領よく取り出す方法を仕組み化する」という感覚で取り組むのでよいのではないでしょうか。

多くの仕組みを導入しても、使われなかったり、最重要指標が正確に適時把握できないという事態に陥れば、もう2度とそのような仕組みを検討したくなくなりますし、仕組化のための代表者や従業者の苦労も水の泡です。

ただ、活用可能性が低くなるほど多くの指標を扱う必要はないと思いますが、ほんとうに必要な情報を日常業務の過程の中で取得し、それを利用するという一連の流れは、一気に作って運用してしまう方が良いでしょう。「情報を取得するだけの流れまでは作ったけれど、活用されないまま」 ということにしてしまっては、その活動は停滞しやすくなります。

 

 

平成24年9月 中小企業庁経営支援課が発表した「中小企業再生支援協議会の活動状況について~平成24年度第1四半期~(平成24年4月~6月)」によれば、相談支援企業への対応において、再生計画策定支援が完了した3,258社(累計)のうち管理会計手法導入による製品別・取引先別等の選択と集中を行った企業の割合を54%とされています。何らかの管理会計制度はあったが、課題を解決するために別の範囲や手法が必要と判断し、導入したのか、なかったから導入したのかはわかりませんが、それにしても再生計画策定支援対象企業のうち半数以上に管理会計の枠組みを設定しているということになります。

このことは、中小企業にも管理会計が有用だということを示しているのではないでしょうか。

代表者や一部の経営層だけが考えていた経営上の課題を共有し、意識の改革につながるためにも、スタッフが直接関わる活動に関する事実をはっきりと示す情報が非常に役立ちます。