必要な”キャッシュ”って?

利益は厳格に管理したいところでしょうが、損益計算書上の利益だけでは、本当に会社が存続していけるのかがわかりません。いわゆる黒字倒産という事例だって実際にあるわけですから。

 

キャッシュフロー把握のためにキャッシュフロー計算書を利用することが様々な参考書類にも記載されています。ただ、我々が関わる財務分析等が必要な案件で、会計士や税理士の先生方にご指導等を頂く際に、キャッシュフローに関する情報の取得方法について伺うと、要はしっかりと資金繰表等で必要資金量などが把握できればそれで良いという回答を頂くことができます。

これは、管理指標と必要キャッシュをつなげる仕組みを検討する際のことで、外部に示すことを目的とした活動ではないことを前提としたものですが、実際にキャッシュフローを意識した管理指標の導入するような仕組みの構築では、資金繰表の方が役立つとさえ言えることがあるでしょう。 会計士さん達としても、「中小企業でキャッシュフロー計算書を作っても、やろうとしている活動に使えないと意味がないでしょ」というニュアンスのようです。

何しろ、キャッシュフロー計算書では、内訳を把握することはできません。資金繰表であれば、多くの場合、経常収支が細分化されている場合が多いですし、企業さんによっては、個々の取引ごとの明細がしっかりと付いていることもあります。(もちろん、どこから資金を獲得して、どこに使ったのかといデータの分析イメージうことを外部に示したり、長期的な資金の獲得能力等をみるためにはキャッシュフロー計算書をということなのでしょうが。)

 

よってここでは、組織の代表者の実務として、より親しみのある資金繰表をにらめっこして、その期の繰り越し収支差額が、新たな投資等に必要な見込資金額等を考慮に入れて許容できる範囲に収まるキャッシュの流入量を考えることを想定しています。

限られた資源を効果的に使うという意味でも、新しいことをやるのではなく、今ある情報をできるだけ利用して、どれだけのキャッシュを獲得すれば良いのか、経常支出はどの程度に抑えるという設定にするのかなどを検討できれば良いのです。

資金繰表では、その月に収入を得た活動に使用した経費という部分の対応が分かりにくいので、実際には他の情報と合わせて見ていくことにはなりますが、資金繰りに貢献しているものは何で、何が金を食っているのかということが掴めれば、そこからさらに細かい分析に入っていっても、本筋となる道を外すというエラーを大きく減らすことができるでしょう。

管理指標の導入や見直しにおいてもキャッシュフローへの影響を考慮に入れて検討されることが大切だと考えられます。


事実情報や便宜的に経営に直結する情報を積み上げる

 

データの積み上げ利益責任単位やコスト責任単位の経営への貢献は、資金繰りへの貢献そのものでもあります。もちろん様々な貢献の在り方は存在しますが、最終的にそれらは企業の維持存続に貢献しなければなりません。またどうせ一生懸命やるなら少しでも生産性を上げて、分配額が増えた方がよいでしょう。(そのまま行けば、分配額を減らさざるを得ないということを発見することもあり得るでしょうが)

最終的にどの指標をどの程度にコントロールすれば、必要キャッシュを維持できるのかということを発見できれば、それを社内で共有し、そのための行動や評価軸を設定していくことで、スタッフ一人ひとりが確かな経営への貢献へ向かえる可能性が格段に向上すると考えられます。その上、経営者にとっては、より実業について把握しやすい管理体制を築くことができるでしょう。

不確定要素の多い経営環境ですが、今ある経営活動について事実情報をしっかりと把握することは、工夫次第でできます。不確定要素が多い経営環境であるが故に、これは一層重要だと思われます。