スタッフのモティベーションを意識した、手順書の作成と伝達

仕事を教えるとき、多くの企業は先ず、手順に沿って仕事ができるように教育すると思います。
しかし、手順が守られるためには手順書があるだけでは難しく、ましてや業務の質を上げていくにはスタッフ自身の意識がとても重要になります。
「手順書が外部から求められているから」という理由で手順書を作成する会社もありますが、求めた側には、手順書を求めるに至ったそもそもの理由やねらいがあることでしょう。
手順書の作成には多くの手間がかかるため、「手順書を求められるから作る」ということではかなりもったいないように思います。
ここでは、手順書の意義やコミュニケーションツールとしてどのように使うかなどを検討するため、カレーの作り方の手順を参考にしてみました。

手順書は、単に手続きのみを示したものになっていませんか?

手順書があれば、少なくとも標準的な業務の水準が維持できるか?と聞かれれば、多くの方は「ノー」と答えるでしょう。
手順イメージ1

一概に手順書といっても、これがどの程度有効に機能し、パフォーマンスに良い影響を与えるかということを考えると、相当に多くの要素が上手く機能し合わなければ難しいということは明らかです。
業務プロセスが求められるパフォーマンスにつながるためには、次のような要素が必要でしょう。

①作業を行う要員の技量
②管理の水準
③モラール
もし、手順書を単に手順だけを示したものにしていたとしたら(ほかに代替する機能が無いとして)、その手順がいかに重要なものだったとしても、それが理解されずに、必要な手続きが飛ばされてしまう可能性を高めてしまうかもしれません。

なぜ、その手順でなければならないのか? ~手順の大切さを伝える~

 

手順の意味をしっかりと伝える、これは、とても大切です。

手順のイメージ2

 

意味のない(理解できない)ことを続けるのは、だれにとっても苦痛です。本来手順書は、その手順を遂行した結果何らかの目的を達成するように作られているはずです。

【手順書の目的】

その手順がどのような目的を達成することを意図しているのか?

【手順書内の要素の意味】

目的達成のために一つひとつの手順書内の要素がどのような役割を果たしているのか?

少なくともこれらのことは、手順の伝達において、どの指導者からもしっかりと伝達されるような仕組みになっていることが大切です。

 


手順を守るという基本が自分の役割とつながる、顧客や仲間が喜んでくれるという体験

手順のイメージ3

手順書の目的や一つひとつの手続きの意味が伝達されるためには、やはり、単に手順の流れだけを記載するということではなく、「ポイント」や「それがポイントである理由」が記載されているほうがよいでしょう。

指導者も、様々な業務の中で指導という役割を負うわけですから、指導の過程で手順書から伝達のポイントを容易に確認することができたほうが効率的です。

せっかく時間をかけて手順書を作ったり、見直したりするのであれば、伝達される側の視点に立って、手順の意味や一連の手順の目的、それが組織の役割の何とつながっているのか、などを伝えやすくする工夫をするのも良いのではないでしょうか。

さらに指導者には、相手がその手順を守った結果、お客様が喜んでくれたとか、その手順の後を担当する担当者や部門の業務が円滑に運ぶなどといった体験を狙ってさせる仕掛けをすることで、スタッフのモラールアップやモティベーションの向上につなげることが期待されます。


以前は、先輩から「これをこの通りにやれ」とだけ伝えられるということも多かったと思います。指示された側は黙々とひたすら指示通りに遂行する努力を続ける毎日を過ごし、あるとき、「なるほど」 とその指示の意味が分かったり、何かの結果が出ていたりという体験をしてこられた方も多いでしょう。プロとして仕事を行う以上は、このようなプロセスを経てベテランになっていくという過程もとても大切なように思います。

しかし、現代のように情報が溢れ、我慢しなくても比較的容易に楽しみを見いだせる時代にあっては、指導者の意図に反して、その意味を自ら理解できるまで作業を続けることが困難な環境にあるともいえます。 それでも、ベテランの技術や知恵が伝わっていかないという損失は、なんとか避けなければなりません。それこそ、「極めてもったいない」状況を組織内に作らないために、組織や指導者など、伝える側が工夫を凝らせることはないか、検討の余地は十分にあると思います。