組織のコミュニケーションを考える上で、リーダーシップは重要な軸の一つであり、リーダーシップは組織の目的達成に大きな影響を与えます。

ここでは、リーダーのあり方に関わるリーダーシップについてみていきます。

リーダーシップの源泉

リーダーシップには様々な考え方があると思いますが、ここでは、比較的一般的だと思われる「組織に魅力的な目標を設定し、その達成のために、メンバーやチームに影響を与える力、行動」をリーダーシップと捉えることとします。

リーダーシップの源泉には、組織から与えられる力である合法勢力報酬勢力強制勢力と、リーダー自身が持つ資質・能力からくる力である専門勢力準拠勢力があると言われます。(情報勢力などを加える場合もあります)

リーダーシップの源泉
表:リーダーシップの源泉

これらの力のうち特に「準拠勢力」が重要で、リーダーシップの在り方に大きく影響を与えるとされます。

その役割に位置付けられれば組織から与えられる力や、リーダーの資質や能力からくる力の一つである専門勢力のように、仕事ができると受け手が感じる力ももちろん重要な要素ですが、現在のように変化の激しい環境の中では、「準拠勢力」によってパフォーマンスに大きな差が出る可能性は確かに高いと言えそうです。

リーダーシップの理論から望ましいリーダーシップスタイルを考える

さて、このようなリーダーシップの源泉に基づいてリーダーは、組織の目的や目標の達成に向けて、メンバーに影響を与えることができるとされますが、パフォーマンスが高いリーダーの資質を分析することは大変難しいく統一的な見解が得られなかったと言われれています。ビッグデータの活用が様々な方面で模索される時代ですから、今後資質の分析が進むということもあるのかもしれませんが、ここからはリーダーの行動類型による分類やリーダーシップが発揮される状況による分類に着目し、有効なリーダーシップのヒントを考えてみたいと思います。

リーダーシップの行動類型(命令的なのか、放任的なのか、民主的なのか、参加的なのかなど)によるメンバーのパフォーマンスへの影響の研究には様々なものがありますし、コンティンジェンシー理論では、望ましいリーダーシップスタイルは、そのリーダーシップが発揮される時の状況により異なるとされます。

ここで先ずは、行動類型論の中から、システムⅣ理論を見てみましょう。

リカート(Rensis Likert)はリーダーの管理特性(システム)を4つに分類しました。

システム1権威主義的専制型リーダーが専決
システム2温情的専制型メンバーに配慮するがリーダーが専決
システム3相談型メンバーに相談し決定。一部権限移譲
システム4参加集団型集団による意思決定志向。

そして、有効なリーダーシップには、リーダーとメンバーの支持的関係、集団的意思決定の重視、高い業績目標の設定の3原則が重要であるとしました。

反対に、職務中心の監督を行い、細部まで詳細にメンバーに指示するなど直接の関与が多く、部下の失敗等に批判的に関わり、仕事の価値ではなく、定めた通りに遂行することを重視するなどの傾向がある場合には、そのリーダーシップは低業績につながりやすいとしています。

次に、ハウス(Robert J. House)のパス-ゴール理論を見ておきます。

これは、メンバーが目標(ゴール)を達成するために、どのような経路(パス)を辿ればより有効かを示すことが、有効なリーダーシップにつながるとするものです。

目標設定のための経路を示すことが有効であるというのは、「メンバーの動機づけの強さは、期待できる報酬の価値×それを得られる確率になる」という、ブルーム(V.Vroom)の期待理論(モティベーション理論の1つ)に基づいています。

そして、環境要因(周辺環境、業務構造、組織・権限体系など)と、メンバーの個人的特質(主体性、経験、能力)の組み合わせにより、有効なリーダーの行動は異なるとしています。

リーダーの行動特性等に関するいくつかの理論に学べば、リーダーは権威主義や放任に陥らず、課題志向と人間関係志向を両立させ、メンバーの意見を踏まえたり参加を促したりしながらメンバーを援助する行動をとることが、高いパフォーマンスにつながると考えられます。これは、リーダーシップの源泉のうち、準拠勢力が重要であるとされることとも整合しそうです。

また、リーダーは、高い目標を設定し、目標の達成や報酬が得られる道筋をメンバーに示し、メンバーを援助することで、メンバーのモティベーションを高めるようなリーダーシップを発揮できると言えそうです。

様々な組織で、様々な人材がリーダーとしてその役割を担うため、リーダーが置かれた環境も、リーダーシップスタイルも様々であり、課題も多様だと思います。だからこそ、有効性が高まるとされるリーダーシップのあり方を理解したうえで、リーダーが自身のリーダーシップスタイルを検討することで、難しいリーダーシップをより有効なものにできる可能性が高まるのではないでしょうか。